
帚木(ははきぎ)
光源氏が先輩たちと理想の女性について語り合う、
有名な「雨夜の品定め」の回。
この後しばらくの主要登場人物である人妻の空蝉と出会う。
帚木
一般的にはホウキグザという植物の事を指す。
ボザボサした植物で、
束ねて箒として使用したからそう呼ばれる。
このホウキグザの実が「畑のキャビア」とも呼ばれる
秋田名産「とんぶり」となる。
上記に関連して、
別にホウキグザ特定でなくても
「束ねて箒になるような(として使用した)植物」をひっくるめて
箒木と呼ぶ場合もある。
しかしながら実はここまでの説明どうでもよく、
源氏の巻タイトルの場合の箒木は、現在の長野県下伊那郡阿智村
にある「園原伏屋の檜の木」のことオンリーを指している。
この檜はボッサボサしていて、
遠くから見ると箒を立てたように見えるのだけれど、
あそこ行ってみようぜ!と近付くと
あれ?どの木だったかよくわからなくなる、
として古来より有名で、歌によく詠まれたのです。
光源氏の場合、
近くへ行くとすっと逃げる、
そんな空蝉のことをこの木に例えて詠んだのです。
現在もこの木はありますが、行くとがっかりするのでお勧めしない。
中央自動車道の園原インターチェンジの「園原」はこの地名から由来。
園原や、伏屋に生ふる帚木の ありとは見れど逢はぬ君かな
坂上是則
箒木の 心を知らで 園原の
道にあやなくまどいかな 聞こえんかたこそなけれ
光源氏
やっと源氏香マークが使えました。
一巻から「ハズレ」扱いってどういうことよ、と。
あと、「輝く日の宮」については今は無視する。
日本で箒が似合う男性といえばレレレの人。
という風に決定してしまうので語ることがない。
そもそもこの巻のタイトル、箒と関係ないし。
檜、もしくは信州園原である必然性も感じない。
あえて言うなら空蝉イコール受領の妻。
ここには都の香りよりかは田舎臭さが少々感じられる、
現代に置き換えるなら「エキゾチックな人」とでも言いましょうか。
でも、
「遠くから目標目指してやってくると、近くへ来たら消えちゃう」
そんな対象物ならなんでもよかったのですよたぶん。
ナスカの地上絵とか近い感じじゃないかと思う。
源氏物語 巻二 「ナスカの地上絵」。
あーしょうがない。素直に巻の中身についての話にしよう。
この巻のハイライトといえばやっぱり「雨夜の品定め」です。
いや女性はむっちゃムカつくと思うのですけれど、
これは男子たるもの、青春に一度や二度は開催参加していないと、
そこで「…俺、歪んでないか?」とか「うおーわかるわかる」とか
「お前も苦労してるのね」とかいろいろ考えないと、
健全な男性になれません。
ここでは四人がそれぞれ、自分の好みや体験談を語るのですけれど、
やっぱりメイン登場人物と脇役では台詞の回数が違います。
しょうがない。
光源氏は一番若いから大体聞き役、
藤中将は「昔のいい恋の話」をする。この二人はいいとして。
プレイボーイとして名高いという設定の左馬頭、
この人はいろいろ理屈をつけますが、ちょっと庶民的。
藤式部の丞に至っては話が出来すぎなので
「ネタだろそれ」と突っ込まれています。
かわいそうだろ…。
この談義は、なかなか捨てがたい魅力を放っているのです。
覚えてる限りで列挙すると、
(つーか全く源氏物語を見ないでうろ覚えで書いているし、
研究家でもないので細かいところは知らぬ。)
「女って、上流中流下流の出身者がいるけれど、中流ぐらいが一番魅力的だよね」
「で、中流ってどこからどこまで?いいとこの生まれが下がって庶民ぶってるのと、
下々の出の奴が成り上がって来ているのと、どっちも中流?」
「上流上流言うけど、すぐそれを鼻にかけたりする女はダメだね」
「大したもんじゃないのに、
自分は教養がある!っての見せびらかしたりする女、いるよなー」
「すぐ他の人の悪口言ったりとかな。ガッカリするよなー」
「恋人にしたい女と、妻にしたい女って別だよね」
「つーかもう階級も見た目とかどうでもよくね?性格が普通で、
真面目で素直な人が結婚相手にはいいよね。
欠点とかあっても、それより一緒にいて安心できる感じならよくね?」
ほーら身勝手と言えば身勝手だけど、耳の痛い話でしょこれ。
現代にも通じるものがありまくりで。
というかここですごく嫌な感じの人を挙げてみるのです。
上記の例から抽出しますと、
「上中下の出身関係なく、
私は教養あるのよ!とか自慢しながら漢詩とか書いちゃって、
でも案外つまらない出来で、でも本人気がついてなくって、
すぐ自分の自慢するし、すぐに人の悪口言う女」
…該当する人物が作者・紫式部の身近に、一人います。
つまりこの場面、かの天敵、清少納言への遠まわしな批判なのです。
…いや直接批判ではなく、
「たまたまー、私の嫌いなタイプの女を挙げたら、
それがあの人のこと書いてるみたいに思われちゃうのよね。
あくまで一般論よ。というかわたしの私論よ。
…でもみんな同意するでしょ?でしょー?やな女っているよねー。」
ということかもしれない。
それにしても紫式部、あざとし。
で、話戻すとこいつらって結局、
話がグダグダになって、結論無しで終わってくんですよ。
あるよね、そんな飲み会。
青春の通過儀礼の一環として、何度もあるよね、そんな飲み会。
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